小学校の頃には、僕のほかに2人、いじめられ引きこもりがいた。
1人は同級生の村田。
こいつはこの間、普通にブックオフに友達と居た。
もう1人は学年一個下の長谷川。
こいつは、つい最近くるまやラーメンでバイトをし始めたらしい。
みーんな変わっちまった。
悪い変化か、良い変化かで言えばそれはもう世間的にはいい変化なんだろう。
引きこもりに友達ができました。
引きこもりがバイトして社会復帰しました。
っていう。
奴らはなんとかトンネルを抜け出した。
長谷川を3日前に見かけた。
長かった髪の毛はバッサリと切られ
顔つきも
脳に蛆がわいたロバみたいな表情→ニンジンを頬張るイキイキとしたロバの表情
に変わっていた。
駅前だった。
僕はいつものように、宇都宮駅の銅像前で這い蹲り「誰か助けてくれ〜誰か助けてくれ〜」
とうめいているところだった。
バス停の辺りのベンチに腰掛けてメールをうっているのは確かに長谷川だった。
僕は地面にはいつくばったまま声をかけた。
「長谷川ぁ…」長谷川は声に気づき、僕のほうを向いた。
が、誰だかわからないようだ。
「長谷川ぁ…」2回目呼んだときに気づいたようだ。
僕らは小学校時代、特に喋ってはいなかった。
しかし、いじめられっこ達は互いを意識する。干渉はしないが。
よって、奴も僕のことは覚えていたようだった。
「青木さんですか」
一方は、ラーメン屋でバイトしている。
もう一方は、駅前でひたすら唸り声を挙げながら地面を這いずっている。
このときほど、運命の残酷さを実感した瞬間は無かった。
既に奴は僕を残して、人生を再出発させていた。
長谷川の「え?お前まだそこなの?」的な視線が痛かった。
「長谷川ぁ…」「久しぶりです」
「長谷川ぁ…」「長谷川です。青木さん元気でしたか。今、何やってるんですか?」
「長谷川ぁ…」「『長谷川ぁ…』ばっかりじゃ何言いたいんだか分かりませんよ」
「お前も明るい世界へ飛び立っていってしまったのだな…この裏切り者めぇ…!」「いや、別に裏切るとかそういうことではないんじゃないんですかね」
「ラーメン屋で働いているらしいじゃないか…」「そうなんですよ。今、あの環状線沿いのくるまやラーメンの方で」
「厨房でメンマ裂いたりしてんのか…」「はい。厨房でメンマ裂いたりしてます。今は仕事が楽しいです。
たぶん僕にはこれしか無いかなって思いますし…。ラーメン作って生きていきます」
「黙って聞いてりゃよぉぅ…」「え?何がですか?」
「お前は我々引きこもり続行者からすれば負け組だよ…。ククク…。脱落者とでも言おうか…。
この暗く長いトンネルから耐え切れなくなって、逃げ出したみたいなものですよ…フフ…」「そうなんですか。青木さんはじゃあ今も引きこもってるんですか」
「当然だ。今はかすかだが、誇りすら感じている。ただ辛いぞ。
いっぱいの真っ白な画用紙を買ってきて、黒いクレヨンで塗りつぶして
裏返して、もう一方の面も黒く塗りつぶす、これをひたすら続けるような生活だ…」僕は突然、顔をあげて叫んだ。
長谷川ぁ!
お前
今から
バイト先
行って
店長
殴って来い!
そんで
また
引きこもれ!しかし目の前には既に長谷川は居なかった。
駅前の忙しそうな人たちが僕の叫びを聞いて聞かぬフリして左右にかけぬけた。
街に取り残された気分だった。
僕はすごい詩を書きたい。
僕は未だに夢を見ている。
言葉で人を殺す夢だ。
僕は立ち上がり、追いかけてくる現実から逃げるように家まで走った。
画用紙を
裏返して裏返して裏返して裏返して
裏返して裏返して裏返して裏返して
裏返して裏返して裏返して裏返して
[ 2008/05/05 10:43 ]
日記 |
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