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記憶のピープショウ 

ベッドハウスでの生活も2ヶ月が過ぎた。
僕はハスネイヴ(Hathnave)という病気を患っている。
聞こえる程、透明な病気だ。
主治医は相変わらず全裸のナースを引き連れて、僕をボコボコにしにやってくる。

当たり前の話だが抽象画は抽象概念を描く。
掠め取られた自明性とか、汚い花を見たときのいいようもない不快感とか。
それは意味の無い闘争かもしれない。

僕はふと記憶を巻き戻してみることにした。



(2005年 冬)バス停
バス停で僕の座っているベンチの横に立っていた、明らかに日本人でない男が
「冬なんだな…」と呟いた。

そのとき、僕はズボンを履いていなかったんだけど
だから寒いのかと思っていた。
でも、それは違って、冬だから寒かったのだ。

コールドな僕ら、バス待ち人。
車なんて一台も走っていない寂れた道路にやってくるバスを
白馬に乗ったピエロに見立ててずっと待っていた。

バス停に新たに、知らない学校の制服を着た女子高生がやってきた。
肩から下げたスクールバッグにはスティッチのぬいぐるみがつけてあり、僕は
この女は友達と撮ったプリクラを前略プロフに貼り付けたり
学校の昼休みにヨーグルトを食べたり
その短いスカートの上にキャラクターの描かれたひざ掛けを掛けて
授業に臨んでいるのだろうと思った。

ミニスカートを履いた彼女と
パンツ1枚の僕の脚の露出度が大体同じだったことに若干の戸惑いを覚えた。

急に強い風が吹いたとき
彼女は「あたしバカみたい」と言って笑った。
僕はおしっこを漏らした。

僕の頭ぬ鳥のゲロがかかった瞬間
右から「ねえ」と声がした。

明らかに日本人でない男が女子高生に対して発した声だった。

彼女は答えた
「はい」

「結婚しよう」

「いいよ」


2人は抱き合ってキスをした。

僕も僕に声を掛けた
「はい」

「結婚しよう」

「いいよ」

僕と僕は抱き合ってキスをした。




(1999年 夏)あのとき僕らは
ノストラダムスは世界を揺るがす大予言をした。
1999年に世界に恐怖の大王が舞い降りるというものだ。
当時、小学2年生だった僕は、それに真っ向から反抗した。

「絶対に来ない。恐怖の大王は絶対に来ない」

勿論に、歴史的な予言者と、その頃は詩を書いてなくて本当に何も無かった僕とでは比べ物にならない発言の重みがあって、僕の言うことは誰にも相手にされなかった。


どーせ、世界は滅びるのだからと夏休みの宿題を全くやろうとしなかった安田君などは、もう予言の一ヶ月前から青ざめていた。
彼は予言の日の前日までに全財産を使い切ると心に決めていた。
といっても小学生の全財産なんてたかが知れており、全財産910円を駄菓子屋で使いまくるというかわいらしいものだった。

一方、当時から既に不登校だった僕はジャスコの店内をウロウロしていた。
その日はいつもより店内に障害者がたくさんいた。

基本的に昼間のスーパーにはあまり人がおらず、妙に静かで変な空気が流れており
その空気感が僕は大好きなのだがその日の異様な空気感はどうも好きになれなかった。
帰り道、駄菓子屋の前を通ると、木のヘラで食べる小さいヨーグルト風菓子を大量に食べている安田君を見た。
その姿になぜだか、僕は殺意が沸いた。
本当になぜだろう。

予言の日。覚えてる。
暑い夏の日。
僕は早起きしてピコのTシャツと茶色の半ズボンに着替えて、玄関にあった適当なサンダルを履いた。
そしてリュックに包丁一本のみを入れて家を出た。

外に出ると、朝から日差しが強くて僕はクラッとしてしまった。
僕はヨロヨロと自転車に乗り、ゆっくりとペダルをこぎ始めた。
そして町を見下ろせる山に上った。
ミーンミーンミーンセミがうるさい中、僕は夏を駆けぬいた。
自転車の後ろに「恐怖はやってこない」と書かれた紙を貼って。




(1998年 夏)
じぃじは唐突に話し始めた。

「龍一郎、わしが小坊だった頃の話じゃがの、聞いてくれるけぇ?」
「聞かせて」
「今、神社の裏に公民館があるじゃろの。あすこはの、昔はの、芋畑だったのじゃ
 ほいでの、わしはの、そこのカエルをたくさんたくさん捕まえての、生きたままで虫カゴに詰め込んどったのじゃ」
「気持ち悪い。おえ。」
「カゴの中で緑色がうごめいちょった。暑いかったけぇ、目ん玉飛び出しよる奴までおったじゃ」
「何でそんなことしたん?」
「ナチスよ。昔、世界で大きなの、戦争がおこうたのじゃ。ほいでの、ヒトラーがの、人間たちをの、牢屋のような
 うすぐろーて、せまっ苦しいところに閉じ込めたのじゃ。ほいで全部残らず殺しよったわ。
 その話聞いての、小坊のわしは怒ったけぇ。それなのにの、それなのにの、わしはヒトラーの同じことをしたんじゃ」
「僕、ヒトラー聞いたことある」
「ほうか。それを毎日毎日しとったが。学校終わるやろ。ほいだら、すぐ畑に来るき。
 前日集めたカエルは既に死んどるけぇーの、それは川に残らず流すんじゃ。ほいでまた集めての。それを毎日じゃ。
 けどの、ある日から、前の日集めたはずのカエルのカゴが全部、空になっとるんじゃ
 集めても集めてもの、次の日には全部いなくなっとったわな」
「怖い」
「夏休みに入ったころじゃった。わしは夜中に目ぇ覚ましての、いつもの神社の裏の畑に行ったんじゃ。裸足でぞ。
 ほいだら、神社の賽銭箱の前に誰か座っとったんじゃ。
 ほいでの、ぺちゃぺちゃ音をたてよるわけよ。
 怪しいけぇの、持っとった懐中電灯でそいつをパッと照らしたのじゃ。
 ほいだらの、近所の浪人生の杉作ちゅー眼鏡かけた男がの、カエルを手づかみでずっと喰っとった。
 眼が虚ろじゃった。口ん中がカエルの血でまみれちょった。
 ほいで、杉作がわしに気づいての、小坊のわしにの、笑いながら話かけよるんじゃ
 『ちんちん見せてー』ての。わしは逃げた。杉作は追いかけてこんかった。
 それがあってから、わしはカエルを捕まえるのはやめにしたが。
「怖い。杉作って人はもう死んだん?」
「まだ生きとるが。一回、東京に出て行ったんどがの。そこで出会った車椅子に乗った妻をの、連れてまたここに戻ってきた。
 綺麗な女じゃったが、妻は三十年前に犬に噛まれて死んだ。
 杉作は今、村はずれで煎餅売ってるけ。普通に暮らしとるき。わしは買えんがの」

じぃじは笑いながら、目の前を通り過ぎたセミを目で追っていた。
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[ 2010/06/04 22:20 ] 日記 | トラックバック(-) | コメント(-)


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